新幹線脱線について

1964年に世界初の高速鉄道として開業し、高密度、安全、正確な高速鉄道として世界一の品質を自他共に認める新幹線が、地震という特異な状況下ではあるが、開業から40年で初めて営業運転中に脱線した。案の定、マスコミに叩かれている。

  • 重い旧型の200系だから助かった。軽い新型ならもっと危険だ。
  • 新幹線の安全神話は崩壊した。

など。重ければ脱線しない、横転転覆しないということはなく、さまざまな力のバランスに因るし、最近の車両は車台の振動吸収性能が飛躍的に向上している。また、重い車両は制動に大きなエネルギーが必要で、脱線後の滑走距離も長くなることを加えておく。

初期微動から本震までほとんど時間のない直下型地震では、ユレダスでは対応しきれないし、車体が浮き上がるような1000ガルを越える加速度では脱線は仕方がない。むしろ200km/hを越える速度で脱線しても死傷者が出なかったこと、被災地域を走っていた他の3本は無事に停止できたことにも注目すべき。これはほんとすごいこと。

地震による脱線転覆の危険性は構造上、在来線のほうが遥かに高い。「幸運が重なった」というが、高スペックの専用軌道を走る新幹線だからこそ、その運に恵まれ、この程度で済んだとおいらは主張する。

地震発生から脱線、停止までのメカニズムはこれから鉄道総研やJR、国交省によって解析が進められる。新幹線は基本的にフォールトトレラントなシステムで、日ごろの高品質な運行からそれは既に実証済みだが、今回のような想定を超えた特異な事態には対応しきれない。今後は、脱線を防ぐと同時に、脱線しても車両を守る(横転しない、高架から転落しない、対向列車と衝突しない)フェールセーフな対策が検討されていくと思う。

台湾では

新幹線初の海外輸出で、台北-高雄間で来年10月の開業に向けて準備・工事が進められている。今回の脱線事故は、台湾の新幹線関係者にもショックだったようだ。

しかし、山間部が多く、人口密度が高い、台風があり、地震も比較的多いなど日本と似た地理条件をもつ台湾では、高速鉄道は新幹線以外の選択肢はありえない。仮に自力で開発したとしても、新幹線にかなり似たシステムになったはず。いくつかの改善策は図られると思うが、堂々と新幹線を走らせればいいと思う。

マスコミのやり方

北陸、東北、九州などの新しい路線には、マスコミが(根拠無く)危険と主張する「重い旧型の車両」は入線できない。建設コスト削減のため、路盤スペックを落としたから。こうさせたのはマスコミが形成した世論に圧されたからじゃないのか?

それに、「安全神話崩壊」などというが、そんな神話を作ったのもマスコミじゃん。新幹線を知っている人間なら、その弱点も承知している。安全の本質を理解していない人間が、「安全神話」などというものを作り出す。それでいて事故が起きたからと叩く。

マスコミのやりかは卑怯。