電子制御工学科は月食の夢を見るか

何気に半年ぶりのエントリーなのである。サボタージュしててごめんなさい。久々なので、ちょっと気合い入れて書きました。

kosenconf Advent Calendar

このエントリーは、kosenconf Advent Calendar:2010への参加エントリーです。

昨日は、長野高専の後輩のAtomくんがと題して工嶺祭を紹介してくれました。工嶺祭後夜祭の花火は、おいらが4年生のとき(2000年)に始まったものです。

そういえば月食がありました

昨晩は皆既月食がありました。日本で観測できる皆既月食2007年8月以来だったわけですが、日本の大部分では天候に恵まれず、北海道など一部を除く地域では観望は難しかったようです。おいらのところでも見えませんでした。

ちなみに、今年は月食で始まった年でもありました。月食ではじまり、月食で終わる年です。

2010年1月1日未明の部分月食
http://www.flickr.com/photos/earth2001y/4232066026/

さて、月食の話は一旦ここに置いておいて、高専の話を・・・

長野高専の電子制御工学科というところ

好評のkosenconf Advent Calendar、すでに長野高専関係者3人*1 *2 *3がエントリーを執筆しています。おいらの登場で「また長野か」と言われそうですが、学科が違うので許してください。他の3人は電子情報工学科、おいらは電子制御工学科です。

そう、おいらは長野高専電子制御工学科出身です。在学中にプロコンをやっていたり、わりと仲のいい先生が電子情報工学科にいてたびたびつるんでいるので、電子情報工学科出身と勘違いしている人も一部いるようですが、電子制御工学科出身です。ちなみに、おいらが在学中プロコンや卒研を指導してくれた先生は、教授になるにあたって電気電子工学科に移籍しています。

さて「電子制御工学科」は他の高専にも同名の学科があるところがいくつかあります(茨城高専など)。カリキュラムや歴史を比較をしたことがないですが、長野高専の電子制御工学科は機械工学科を起源としています。正確には、機械工学科の電子機械コースが1992年に学科として独立したものです。そういうわけで、「出身学科は何系?」と聞かれると「機械系」と答えます。

学科設立が1992年で、おいらが入学したのは1997年でしたので、学科1期生の卒業と入れ替わりの6期生ということになります。当時の長野高専は高学年になると特攻服を作る文化がありました。昨年の高専カンファレンス in 長野には、これを着て参加・発表をしたので、記憶にしている人も多いと思います。

「六代目制御」の特攻服

2000年秋ごろに、月刊アスキーにも登場したことがあります。

長野高専電子制御工学科には4年生に「総合実験実習」という実習科目があります。

ここに写真があるようなライントレース車の足回りの機構設計、加工、組み立て、制御用マイコンの回路設計、制作、プログラム開発を1年をかけて実施します。ちなみに、駆動用モータはステッピングモータ、舵取り用モータはサーボモータを用いるというエグい仕様です。

これらを設計・制作・評価していく上でのアウトプットとなるレポートの規模は、1年生〜3年生までの実験実習レポートの総量に匹敵します。

4年生はこの実習の他に、夏休みには2週間の企業実習、秋には工場見学*4と呼ばれる破廉恥なイベントがあります。まさに高専学生活の絶頂とも言える時間と言ってもいいかもしれません。おいらの場合、ここにプロコンが加わります*5。ちなみに「傘」も4年生のときでした。

なんで高専だったか

そもそもおいらが高専に進学した経緯を考えると、冒頭に触れた月食のような宇宙・天文にあたります。最初に天文に興味を持ったのは小学一年生のときだったと思います。当時の愛読書は星図と宇宙図鑑でした。そんな少年がどうなって高専へ進んだのか、ざっくり振り返ると・・・

  • 星おもしろい、宇宙おもしろい
  • むしろ宇宙行きたい、でも地球もおもしろい
  • ロケットとかロボットすごい(この頃から高専を意識)
  • コンピュータすごい

てな具合です。高専入学時の興味が「コンピュータすごい」だったので高専在学中はおもにプロコンが活動の中心だったわけです。

4年生頃には、コンピュータが計算する仕組みに興味を持ち

  • 並列計算すごい

に当たります。ちなみにこの「並列計算すごい」のきっかけはSETI@homeでした。結局原点は昔憧れた「天文・宇宙」なんですな。

卒業研究は研究室にあるパソコンをかき集めてPCクラスタを組み、指導教官(信号処理が専門)が考案した周波数解析アルゴリズムを、並列化して実装するといったことをしました。その後は大学院まで進んでコンピュータサイエンスを修め、並列計算に関した研究で修士号を授かり、現在の職に就きます。

電子制御工学科は月食の夢を見るか

おいらの現在の仕事は、HPCやCAEと呼ばれる分野のソフトウェア開発です。簡単にいうとシミュレーションですね。

高専時代の専攻とはだいぶ違う分野にも見えます。しかし、この分野で仕事をしていくとき、生の金属片を削ったり曲げたり引張ったりした経験、紙と鉛筆と関数電卓で歯車や軸を設計したり、回路を計算したことによって得られた知識と勘は、計算対象となる現象を知るうえで土台となってます。一方で、だからこそもっと勉強しておくべきだったと考えることが多々あり、いまでも高専時代の教科書は仕事のお供です。

昨今、スパコンが一般ニュースを賑わすように、シミュレーションは基礎科学研究から、工学的応用まで広く使われています。この仕事を通じて、高専・技術者の道に進んだ原点に戻ることがあるかもしれない。最近はそんなことを考えながら、将来を考えるようになっています。

さて、つぎのkosenconf Advent Calendarは?

次は、先日行われた高専カンファレンスin沼津で、見事に最年少実行委員長を務めあげたあらなぎちゃんです。これから高専生活の絶頂を迎えようとする彼女の文章に期待しましょう。

*1:kosenconf Advent Calendar : 2010 なんてものが立ち上がっていたので - 京乃

*2:隣の芝を覗くこと

*3:

*4:工場見学は3年生にもあります。4年生は県外に3日間、3年生は県内を日帰り2日間です。なお、2年生時は修学旅行があり、おいらのときは韓国でした。

*5:その背景については、プロコンナイトでの発表"俺とプロコン"を参照